コラム

骨盤底筋はピラティスで鍛えられる?パワーハウスと動きの中の使い方|目黒のStudio KAJi

公開日 / 2026.08.29 更新日 / 2026.08.29
骨盤底筋ピラティス体幹姿勢目黒ピラティス
目黒のStudio KAJiでマットピラティスに取り組む女性
監修
STUDIO KAJi Director
渋木 さやか
医療監修:レディースクリニックなみなみ

「ピラティスは骨盤底筋にいいと聞いて来たのですが、レッスンでは骨盤底筋の運動をしていない気がします」——ピラティスの体験にいらした方から、ときどきいただくご感想です。

そのとおりで、Studio KAJiのピラティスクラスに「骨盤底筋を締める時間」のようなメニューはありません。それでもピラティスと骨盤底筋が結びつけて語られるのには、理由があります。ピラティスは骨盤底筋を単独で取り出して鍛えるのではなく、体幹の一員として、動きのなかで働かせようとするからです。

この記事では、ピラティスの枠組みで骨盤底筋がどこに位置づけられているのか、なぜ意識しなくても働くとされるのか、そしてレッスン中にうまく働かなくなる場面はどこかを、順に整理していきます。

骨盤底筋群とは——骨盤の底につくられた漏斗状の床

骨盤底筋は、ひとつの筋肉ではありません。骨盤の底で漏斗のような床をつくっている、複数の筋の集まりです。骨盤底筋群と複数形で呼ばれるのは、このためです。

主な構成は次のとおりです。

  • 肛門挙筋——腸骨尾骨筋・恥骨尾骨筋・恥骨直腸筋の3つからなる、中心的な筋
  • 尾骨筋——肛門挙筋の後方を補う筋

名前は難しいのですが、ここで押さえておきたいのは1点だけです。骨盤の底は平らな板ではなく、向きの違う筋が重なってできた立体的な床だということ。だから、ひとつのスイッチを押すように「オンにする」ものではありません。

骨盤底筋そのものの構造や、呼吸に合わせてどう動くのかについては、骨盤底筋はヨガで整う?のほうで詳しく整理しています。この記事では、その筋肉が体幹のなかでどう位置づけられ、動きのなかでどう働くのかに絞って進めます。

ピラティスの「パワーハウス」に骨盤底筋は含まれている

ピラティスには、パワーハウスという中心的な考え方があります。胸郭の下から、前は左右の股関節を結ぶ線、後ろはお尻の下あたりまでの領域を指します。

ジョーゼフ・ピラティスは、ここを体の中心と見なし、すべての動きはここから生まれるべきだと考えました。現在のフィットネスやリハビリの分野では、この領域はコアと呼ばれます。そして、手足や全身を動かしながら、代償を出さずに骨盤と背骨を望ましい位置に保つ神経と筋肉の制御を、コアの安定と呼びます。

パワーハウスに含まれる主な筋肉は、次のとおりです。

  • 腹横筋——お腹のいちばん深い層を水平に走る、コルセットのような筋肉
  • 多裂筋——背骨の一つひとつをつなぐ深い筋肉。とくに腰の安定に重要とされています
  • 大殿筋——お尻の筋肉。股関節を伸ばす働きに加え、姿勢筋として骨盤を後傾させ、体幹を安定させます
  • 横隔膜——胸とお腹の境にある、呼吸の筋肉
  • 骨盤底筋——骨盤の底を閉じ、内臓を下から支える筋肉

つまりピラティスの枠組みでは、骨盤底筋は最初から体幹の構成要素の一員として数えられています。特別な部位として別枠に置かれてはいません。この位置づけが、このあとの話すべてに効いてきます。

骨盤底筋と腹横筋は連動する——一方が働けばもう一方も

ピラティスが骨盤底筋の文脈で名前を挙げられる、いちばんの理由がここです。

骨盤底筋と腹横筋は密接に連動していて、一方の収縮がもう一方の収縮を促すとされています。骨盤底を引き上げるとお腹の深い層が働き、お腹の深い層を働かせると骨盤底も応じる。この関係があるため、片方だけを切り離して考えることには、あまり意味がありません。

さらに、骨盤底筋を横隔膜と同時に収縮させると、内臓が腹腔と骨盤腔のなかに保たれ、腹横筋が背骨を安定させる働きが増すとされています。骨盤底筋・横隔膜・腹横筋・多裂筋の4つは、深い層でひとまとまりとして働くと説明されることが多く、体幹の安定を語るときの土台になっています。

もうひとつ、ピラティスにとって重要な性質があります。腹横筋は、手や足の小さな動きが始まる直前に自動的に収縮して、背骨と骨盤を安定させるとされていることです。

意識してから力を入れるのではなく、動こうとした時点ですでに働いている。ピラティスが「まず骨盤底筋を締めてください」という指示から入らず、動きそのものを丁寧に組み立てるのは、この自動性を使うためです。

腹横筋は強く息を吐くときにも動員されるとされていて、「息を吐きながら」という声かけがよく使われるのはそのためです。ピラティスで呼吸が動きとセットで指定されているのには、この点でも意味があります。

骨盤底筋を「特別扱いしない」という発想

骨盤底筋を体幹の一員として扱うことには、実際的な意味があります。

腰痛のある方に尿失禁の症状が合併しやすいという報告があり、骨盤底筋群を特別な部位としてではなく、ほかの筋群と同じように扱う視点が提案されています。腰を支える仕組みと骨盤底を支える仕組みは、もともと同じ体幹の話だからです。

この見方に立つと、骨盤底筋のためにやることは、かなり具体的になります。

  • 骨盤を前にも後ろにも傾けていないニュートラルの位置から動く。骨盤が後ろに傾いた姿勢では骨盤底筋の活動が落ちるとされています
  • 手足を動かしているあいだ、骨盤と背骨の位置を保つ
  • 動きの大きさを、その位置を保てる範囲に収める

ニュートラルの見つけ方は反り腰はピラティスで整う?で詳しく書いていますが、骨盤底筋の観点からも、この位置から始めることには理由があるわけです。

さらに応用として、立った姿勢やスクワットのような動きに骨盤底の収縮を組み合わせ、動作のなかでコントロールする練習に進む方法もあります。荷物を持ち上げるときの脚の置き方を変えて、骨盤底ではなく脚の骨で荷重を受けるようにする、といった工夫も知られています。日常の動作そのものが練習の対象になる、という発想です。

レッスン中に骨盤底筋がうまく働かなくなる場面

ここは注意点です。ピラティスをしていれば自動的に整う、という話ではありません。やり方によっては、むしろ骨盤底に負担をかけることがあります。

いちばん起こりやすいのが、お腹の締め方です。お腹を働かせるとお腹の圧が高まりますが、その圧は水風船と同じで、上(胸のほう)にも下(骨盤底のほう)にも逃げます。下腹部と骨盤底を含めて整えないまま、ウエストだけを砂時計のように強く締めると、骨盤底に余分な圧がかかることになります。「お腹を引き込んで」という声かけは、腹壁が膨らむのを防いで深い層を働かせるためのものであって、締めつける強さを競うものではありません。

脚を使う動きも要注意です。手足を体から遠ざけるほど、体幹にかかる負荷は急に大きくなります。お腹の支えが足りないまま脚を下げていくと骨盤が前に傾き、腰が反ります。この状態では体幹全体の位置が崩れているので、骨盤底も安定した働きをしません。脚を上げる動きでは、骨盤と腰を保てる高さを選ぶことが大切です。この点はピラティスは腰痛に効く?にも書いています。

ほかに、次のような場面があります。

  • 力を入れる場面で息を止めてしまう。呼吸が止まると、お腹の圧の逃げ場がなくなります
  • お尻や内ももを強く締めることで代償する。かつてのピラティスでは殿部を強くしぼる指導もありましたが、現在はほかのコアの筋肉と組み合わせ、日常に生かせる形にする指導が主流とされています
  • 回数や動きの大きさが優先され、位置を保つことが置き去りになる

共通しているのは、力の総量を増やす方向へ行くと崩れる、という点です。

「締めっぱなし」は安定ではない

もうひとつ、ピラティスの文脈で書いておきたいことがあります。

体幹を安定させるというと、常に力を入れ続けることだと受け取られがちです。けれど安定を担う筋肉の仕事は、動きに応じて出力を変えることであって、握りしめ続けることではありません。

ニュートラルを保つというのも、お腹の筋肉と背中を伸ばす筋肉が協調して、同時にほどよく働いている状態を指します。どちらか一方を強く固めることではありません。骨盤底筋も同じで、場面ごとに必要な分だけ働き、必要のない場面では力が抜けているのが本来の姿です。

骨盤底筋はもともと、締まる働きとゆるむ働きの両方を役割として持っています。強く締めっぱなしにする癖には注意が向けられていますが、ピラティスの側から見ると、これは筋力の問題ではなく制御の問題です。動きに合わせて出したり抜いたりできること自体が、そのまま安定の中身になります。

ピラティスでこの問題に向き合うときは、力の入れ方を強くするのではなく、動きの質を細かくしていく方向をとります。同じ動きをゆっくり行う、可動域を小さくする、位置を保てているかを確かめながら進める。出力の練習ではなく制御の練習だ、と考えていただくと分かりやすいと思います。

力を抜く感覚そのものを、呼吸を使って練習したい方には骨盤底筋はヨガで整う?のほうが向いています。呼吸から入るならそちら、動きのなかで使えるようにするならこの記事、という住み分けです。

研究で分かっていること、そして読み替えられないこと

骨盤底筋トレーニングそのものについては、複数の臨床試験をまとめて検証した系統的レビュー(コクラン・レビュー)が出ています。14か国・31件の試験・女性1,817名を対象としたもので、この訓練は、何も行わない場合や効果のない対照と比べて、腹圧性尿失禁をはじめとする尿失禁の症状を治すか改善できるとされています。1日あたりの漏れの回数を減らす可能性があり、有害な出来事の報告はまれで、報告された場合も軽いものだったとされています。尿失禁に対する保存的な対応の第一段階に含めうる、というのが結論です。

ただし、ここには読み替えのできない距離があります。

この報告が検証しているのは、骨盤底筋トレーニングという明確な介入です。ピラティスのクラスではありません。ピラティスを続ければ同じ結果が得られる、とは言えません。

ピラティスの解剖学の教科書でも、骨盤底筋が十分に強ければ尿失禁の予防に役立つと考えられるとしつつ、複雑な骨盤底の機能不全は専門の医療者に委ねるべきだとして、それ以上には踏み込まない立場がとられています。私たちも同じ線を引いています。

では、ピラティスにできることは何か。骨盤底筋を含む体幹の筋肉を、動きのなかで協調して使えるようにすることです。症状の治療ではありませんが、日常の姿勢と動作で骨盤底にかかる負担を減らしていくことにはつながります。

運動全般については、厚生労働省も生活のなかで身体活動を増やすことを勧めています。骨盤底筋のためだけの特別なメニューを探すより、続けられる運動習慣のなかに置いていただくほうが現実的です。

症状があるときは、運動より先に

次のような場合は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。

  • 咳やくしゃみ、運動のときの尿もれが続いている
  • 下腹部に下がってくるような感じや違和感がある
  • 骨盤底のあたりに痛みがある

重い尿失禁では、骨盤底筋の機能を改善するだけでは症状が解決しないことがあり、医師との連携が必要になるとされています。運動でできることと、医療で確かめるべきことを分けて考えていただくのが確実です。

Studio KAJiは、レディースクリニックなみなみと同じフロアにあります。体のことを相談しやすい環境で運動を続けられることが、このスタジオの特徴です。

なお、Studio KAJiのピラティスクラスは、現在いずれも妊娠中の方にはご参加いただけません。妊娠中の方にはマタニティ専用クラス(ヨガ)をご案内していますので、主治医にご相談のうえお越しください。

目黒でマットピラティスを始めるなら

Studio KAJi(目黒駅西口より徒歩4分)は、女性専用のヨガ・ピラティススタジオです。ピラティスクラスは専用マシンを使わないマットピラティスで、自分の体重とマットだけで進めます。

バネの補助がないぶん、体を支える力を自分でつくることになります。骨盤底筋を含めた体幹の話でいえば、道具に支えられていない状態で位置を保つ練習ができる、という利点があります。強度はその日の状態に合わせて落とせますので、運動が久しぶりの方でも始められます。

はじめての方には、まず骨盤と背骨の位置を確かめるところからご案内しています。骨盤底筋を意識するのは、そのあとで十分です。

ヨガとピラティスで迷っている方はヨガとピラティスの違いもあわせてご覧ください。開催中のクラスはレッスンスケジュールで、クラスの種類はクラス一覧でご確認いただけます。まずは体験レッスンからどうぞ。

まとめ

ピラティスにおける骨盤底筋は、単独で鍛える対象ではなく、パワーハウスという体の中心を構成する一員です。腹横筋と密接に連動し、横隔膜や多裂筋とともに、深い層でひとまとまりとして働きます。

だからピラティスは、骨盤底筋を締める時間をつくる代わりに、骨盤と背骨の位置を保ちながら手足を動かす練習を積み重ねます。位置が保てているとき、骨盤底筋は動きの一部として働いています。

締める強さを競うのではなく、必要なときに必要なだけ働く状態へ。体幹全体の制御を整えることが、結果として骨盤底にとっての近道になります。

よくあるご質問

ピラティスでは、骨盤底筋はパワーハウス(コア)を構成する筋肉のひとつとして扱われます。骨盤底筋と腹横筋は密接に連動し、一方の収縮が他方を促すとされているため、体幹を使う動きのなかで自然に働くことが期待されます。ただし、骨盤底筋トレーニングという医療的な介入と同じものではありません。症状がある場合は運動より先に医療機関へご相談ください。クラスの内容はピラティスのクラス紹介をご覧ください。
骨盤の底で漏斗のような床をつくっている、複数の筋の集まりを指します。中心になるのが肛門挙筋で、腸骨尾骨筋・恥骨尾骨筋・恥骨直腸筋の3つからなります。これに尾骨筋が加わります。ひとつの筋肉ではなく、向きの違う筋が重なってできた立体的な床なので、スイッチのようにオンにできるものではありません。構造と呼吸との関係は骨盤底筋はヨガで整う?で詳しく整理しています。
意識しても構いませんが、優先順位としては後ろのほうです。お腹の深い層にある腹横筋は、手足の小さな動きが始まる直前に自動的に収縮して背骨と骨盤を安定させるとされていて、骨盤底筋はこれと連動します。まず骨盤と背骨の位置を保つこと、そして力む場面で息を止めないこと。この2つが保てていれば、骨盤底筋は動きの一部として働きます。
強く締めればよいというものではありません。お腹の圧は行き場を求めて上下に逃げるため、締め方によっては骨盤底に余分な負担がかかります(詳しくは本文で説明しています)。「お腹を引き込んで」という声かけも、締めつける強さを競うものではありません。
目的で選んでいただくのがよいと思います。姿勢のクセを整えたい、手足を動かしながら骨盤と背骨の位置を保てるようにしたいという方には、この記事で扱っているピラティスの考え方が合います。一方、骨盤底そのものの感覚がまだつかめていない、まず力を抜く側から覚えたいという方は、骨盤底筋はヨガで整う?から入るほうが近道です。両者の一般的な違いはヨガとピラティスの違いで解説しています。

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