産後の運動はいつから再開できる?部位ごとに違う目安と、急がないほうがよい理由|目黒のStudio KAJi
「産後の運動って、いつから始めていいんでしょうか」——体験レッスンのお問い合わせで、産後の方からいちばん多くいただく質問です。
この質問に一律の日付で答えることはできません。産後の体は、部位によって回復の速さが違うからです。呼吸を使ったやさしい動きなら早い時期から行えるとされている一方、腹筋の強化は産後6週まで待つことが勧められています。同じ「運動」という言葉でくくれない差が、この時期にはあります。
この記事では、産後の体が回復していく順序と、部位ごとの再開の目安、そして急がないほうがよい理由を整理していきます。
産後の体は「一直線」には戻らない
まず、体の内側で何が起きているのかを時系列で見ておきます。
妊娠で大きく肥大した子宮は、分娩後に急速に収縮していきます。産褥4〜5日で臍と恥骨の中間あたりまで下がり、9〜13日頃には腹壁の上から触れなくなるとされています。悪露は約1週間の赤色から褐色を経て、3週以降は黄白色へ移行していきます。全身の血液・循環・腎機能も、おおむね産後2〜6週で非妊娠時に近い状態に戻るとされています。
数字だけ並べると順調に回復していくように見えますが、実践の上で大切なのは、この回復が一直線ではなく段階的だという点です。子宮が触れなくなったことと、腹筋に負荷をかけられることは、別の話です。
月経の再開は、授乳をしていない方で平均約2ヶ月、授乳中の方で約3ヶ月とされていますが、個人差が非常に大きい部分です。なお、月経が来ていなくても排卵は先に再開しうるとされています。
「いつから」に一律の答えがない理由
産後の運動再開に決まった日付がないのは、条件が人によって違いすぎるからです。
- 経腟分娩か帝王切開か
- 会陰の切開や裂傷があったか、傷がどこまで閉じているか
- 妊娠中や分娩時に合併症があったか
- いま睡眠と休養がどれくらい取れているか
- 育児をどれくらい一人で担っているか
産後は、睡眠・休養・食事が不足しがちな時期でもあります。同じ「産後2ヶ月」でも、まとまって眠れている方と、そうでない方では、体が運動を受け止められる余力が違います。
最終的な可否は産後健診で主治医に確認していただくのがいちばん確実です。この記事は、その相談をするときの手がかりとしてお読みください。
部位ごとに再開の目安が違う
ここがこの記事のいちばん大事なところです。産後の運動再開は、体を一括りにせず、部位ごとに考えられています。
骨盤底筋については、出産から8〜12日ほどは各部位が強く伸張・損傷している時期とされ、酷使しないことが勧められています。12日以降の数週間で、漸増的に再強化していく流れです。このとき、腹圧が生じない状態で行うこと、そして会陰の傷がある場合は完全に閉じるまで収縮の再開を待つことが挙げられています。
腹筋については、産後6週間までは強化を行わない、とされています。6週以降に再開する場合も、常に骨盤底筋を収縮させながら行うことが勧められています。
骨盤の動きそのものを取り戻すエクササイズは、少なくとも6週間待つこととされています。分娩では骨盤の骨が大きく離開するためです。
帝王切開だった場合、術創部の治癒のめやすはおおむね6週とされ、傷へのアプローチはそれ以降とされています。
そして、荷物を持ち上げる動作は、産後数週間は避けたい動作として挙げられています。ここには赤ちゃん・ベビーカー・かごなども含まれます。現実には赤ちゃんを抱かないわけにはいきませんが、「持ち上げる動作は体にとって負荷である」と知っておくだけでも、動き方は変わります。
産後1ヶ月・2ヶ月で何ができるか
では、待っている間は何もできないのかというと、そうではありません。
産褥期から行えるものとして挙げられているのは、骨盤底にかかる下向きの圧を減らす練習です。方法は姿勢と呼吸の2つに分かれます。
姿勢のほうは、体を傾けて重力の向きを変えるというものです。たとえば仰向けになり、腰の下に折りたたんだタオルを入れて骨盤を少し高くする。それだけで、内臓が骨盤底を押し下げる力は弱まります。
呼吸のほうは、吐く息を使います。横隔膜と骨盤底は体の上下で対になっていて、あいだの内臓は水の入った袋のような関係にあります。息を吸うと横隔膜が下がって骨盤底も押し下げられ、息を吐くと横隔膜が上がって骨盤底も引き上がる。つまり吐く息が長いほど、骨盤底にかかる圧は抜けていきます。この仕組みは骨盤底筋はヨガで整う?で詳しく説明しています。
やり方そのものは単純で、仰向けで両膝を立て、吸う息より吐く息を長くとるだけです。注意点が2つあります。お腹を大きくふくらませる呼吸より、胸郭を横に広げる呼吸のほうがこの目的には向くとされていること。そして、お腹に力を入れて息を押し出さないことです。いきむ方向の力は、減らしたいはずの圧をかえって増やします。これは1日に何回行ってもよいとされています。
骨盤底筋そのものの収縮も、ゆっくりとした最小限のものであれば、仰向けの姿勢で行う限り、授乳のたびなど1日に何回でも行ってよいとされています。
この時期にできるのは、負荷をかけることではなく、感覚をつかむことです。息を吐いたときに骨盤底が引き上がる感じがあるかどうか。どの姿勢だと分かりやすいか。ここを飛ばして回数や強度から入ると、力の入れどころを間違えたまま量だけが増えていきます。
なお、産後2ヶ月ほどは尿をうまく溜めておけず、尿もれが出ることがあるとされています。これも、骨盤底に過剰な圧をかけずにいれば通常は戻るとされています。腹筋の強化や重い物を持ち上げる動作を急がないほうがよい理由は、ここにもあります。産後の尿もれの経過や対処については、同じフロアのレディースクリニックなみなみが産後の尿もれ・頻尿はいつまで続く?で詳しく解説しています。
腹筋運動を急がないほうがよい理由
産後6週まで腹筋の強化を待つ、という目安には理由があります。
妊娠中は、左右の腹直筋をつないでいる白線が伸びて、左右が離れる状態が生じます。腹直筋離開と呼ばれるもので、妊娠中にほぼ全員に生じるとされています。多くは自然に改善しますが、産後6週の時点で約60%、12ヶ月後でも約32%に残存するという報告があります。
腹直筋離開は、腹壁と骨盤底筋の機能の両方に影響するとされているため、「お腹だけの問題」として切り離せません。
自分で確かめるときの目安は次の2つです。
- 腹直筋のあいだが指2本分以上あいている
- 仰向けから頭を持ち上げたときに、白線に沿ってお腹が盛り上がる、あるいは中央が膨隆する
中央が膨隆する状態のまま腹筋運動の回数を重ねても、目指している方向とは逆に働きます。この段階で行うものとして挙げられているのは、仰向けで両膝を立て、息を吐きながら肩甲骨が床から離れる程度に頭を挙げる、という控えめな動きです。離開している部分を左右から手やタオルで寄せて支えると行いやすいとされています。
なお、この動きが腹直筋離開そのものを改善するかどうかについては、エビデンスとしてはまだ弱いとされています。体幹の屈曲筋力やボディイメージの改善に寄与する可能性がある、という位置づけです。
再開の順序は「感じ取りやすい姿勢」から
運動を再開する順序についても、考え方が示されています。
まず、感じ取りやすい姿勢から始めること。仰向けのように、どこに力が入っているか自分で分かりやすい姿勢です。そこから座位、立位、そして日常の動作に近い形へと、段階的に負荷を上げていきます。
腹部や骨盤まわりの機能が十分に戻っていない段階で、不良な姿勢や動作を繰り返すと、かえって痛みを助長するとされています。順序を守ることは、遠回りではなく近道です。
産後の骨盤帯痛に対しては、骨盤底筋・腰背筋・腹筋・股関節伸筋の機能を改善する運動が推奨されています。四つ這いでの練習は、仙腸関節の安定を意識しやすい姿勢のひとつとして挙げられています。
実は、育児動作のほうが先に効いてくる
ここは見落とされやすいところです。
産後の肩こり・腰痛・腱鞘炎の多くは、慣れない育児動作で手や肩に過度な力が入り、不良な姿勢が反復されることが原因とされています。1日に何十回も繰り返される動作は、週に1回のレッスンより体への影響が大きいのが現実です。
挙げられている工夫は、どれも今日から試せるものです。
- 授乳では、赤ちゃんを自分の胸の高さまで上げる。授乳クッションやバスタオルで高さを調整し、下を向かないようにする
- 座って授乳するときは足の裏をしっかり床につけ、坐骨に均等に体重を乗せる
- 抱っこや沐浴で、手首を反らせすぎない・曲げすぎない。腱鞘炎や手根管症候群の予防につながるとされています
- しゃがむとき、床から物を持ち上げるときは、腰ではなく股関節を曲げてお尻を後ろに引く
- 立って行う沐浴やおむつ交換では、片脚を足台に乗せると腰の負担が減るとされています
妊産婦の約9割が腰痛を経験するとされ、分娩後もしばらく続くことがあります。ほとんどは産後6ヶ月以内に軽快するとされていますが、妊娠中に腰痛のあった方の約20%は3年後も持続していたという報告もあります。早めに動作を整えておく意味は、ここにあります。
がんばりすぎないことも、この時期の課題
産後は、活動量が両極に振れやすい時期でもあります。無理に動きすぎる方もいれば、家にこもって運動不足になる方もいます。どちらも体には負担です。
産褥3〜10日頃に、集中力の低下・涙もろさ・感情の不安定・睡眠障害といった一過性の状態が現れることがあります。マタニティブルーズと呼ばれるもので、通常は2週間ほどで消失するとされています。ただし重症化・遷延した場合は産後うつ病へ移行しうるとされているため、2週間以上続く場合や悪化していく場合は、早めに相談してください。
産後うつ病は産後女性の約10〜15%が産後1年のどこかで罹患するとされ、発症リスクのピークは産後2週間〜3ヶ月とされています。妊娠中・産後の身体活動が発症の予防に効果的な可能性が示唆されていますが、これは「運動すれば防げる」という意味ではありません。休養が取れる環境を整えることと、周囲に頼ることが基本にあります。
産後ケア事業など公的な支援もあります。体を動かすことは、その全体のなかの一部分です。
こんなときは医療機関へ
次のような場合は、運動の再開より先に相談してください。
- 発熱がある、出血が増える、悪露のにおいや色に変化がある
- 傷のまわりに熱感・発赤・浸出がある
- 尿がうまく出せない、あるいは尿意を感じにくい
- 骨盤や恥骨のあたりに強い痛みがあり、寝返りや歩行がつらい
- 気分の落ち込みが2週間以上続いている、悪化している
Studio KAJiは、レディースクリニックなみなみと同じフロアにあります。産後の体のことを相談しやすい環境で運動を再開できることが、このスタジオの特徴です。
目黒で産後の運動を再開するなら
Studio KAJi(目黒駅西口より徒歩4分)は、女性専用のヨガ・ピラティススタジオです。
現在、産後の方だけを対象にした専用クラスはご用意していません。産後の方には「赤ちゃん連れOK」のクラスをご案内しており、通常クラスのチケットでご受講いただけます。
- 骨盤ケアピラティス(金曜午前)——骨盤まわりを整えたい方、産後の体を立て直したい方に
- 呼吸と巡りを整えるヨガ(木曜午後)——呼吸から入りたい方に
- リフレッシュフローヨガ(土曜午前)——土曜に通いたい方に
いずれもお子さまとご一緒にご参加いただけます。保育・託児サービスは行っておりませんので、お子さまの見守りはご自身にお願いしております。赤ちゃん用のおくるみをご持参ください。開催曜日と時間は月ごとに変わりますので、レッスンスケジュールで最新の情報をご確認ください。
ご参加は産後1ヶ月以降とさせていただいています。ピラティスとヨガのどちらから始めるか迷われる場合はヨガとピラティスの違いを、骨盤底筋の扱い方については骨盤底筋はヨガで整う?をあわせてご覧ください。次のお子さまを考えている時期の運動については妊活にヨガは効く?で触れています。
まずは体験レッスンから、いまの体で無理なく動ける範囲を確かめてみてください。
まとめ
産後の運動再開に、一律の日付はありません。あるのは部位ごとの目安です。
骨盤底筋は出産から12日ほど過ぎてから漸増的に、腹筋の強化は6週以降、骨盤の動きの再獲得も6週以降、帝王切開の傷まわりは治癒のめやすである約6週以降。そして、その手前の時期にできるのは、呼吸で感覚を取り戻しておくことです。
早く戻したい気持ちがある時期だと思います。ただ、この順序は急いで飛ばしても縮まりません。まずは息を吐きながらお腹と骨盤底が動く感覚を、一日のどこかで確かめるところから始めてみてください。

